「ケアラー支援基本法(仮称)」という「土台」を、この国にも~政策提言に込められた、具体的な柱~(後編)

基本政策に求められている、4つの柱

「前編」では、ケアラーを取り巻く現状と、法制度としてケアラー支援を位置づける必要性についてお伝えしました。

今回はその続きとして、一般社団法人日本ケアラー連盟発行(2026年3月初版)「支える人を支えたい‐ケアラー支援のための政策提言」を参考に、まず具体的にどのような政策の柱が描かれているのかをご紹介したいと思います。

提言集の中で、ケアラー支援のための基本政策の柱としてまずあげられているのが、①「ケアラー支援基本法(仮称)」の制定です。

現在、ケアラー支援に関わる施策は約20本ほどの個別の法令や制度に、「家族支援」「養護者支援」という形で分散して盛り込まれているのが実情です。

それぞれに一定の意義はあるものの、ケアラーという存在そのものを社会的に認知し、その人権や尊厳、ウェルビーイングの向上を明確な目的として位置づける法律は、残念ながらまだ整っていません。

国と都道府県・市区町村の役割分担を明らかにしたうえで、福祉・介護・医療・保健・教育・就労・住宅といった分野を横断する支援体制を築いていくこと。

これらは基本法に期待される役割です。

あわせて、②ケアラー支援総合戦略の策定、自治体が施策に取り組みやすくなるための③財政措置、そして何より④当事者であるケアラーや支援団体の声を政策に反映させる仕組みも、欠かせない要素として挙げられています。

支援の設計で大切にしたいと思う、2つの視点

また提言集では、ケアラー支援施策実施における大事なポイントがいくつかあげられています。

その中で、制度設計にあたって私が特に大切だと感じているポイントが二つあります。

一つは、「ケアラーもケアを必要とする人も、共に尊重される」という姿勢を基本に据えることです。

ケアラー支援は、ケアを必要としている人(要介護者等)への支援を後退させるためのものでは決してありません。

むしろ、ケアを必要としている人への支援サービスを充実させることと、ケアラー自身の心身の健康・経済状況・社会とのつながりを守ること等は、両輪として進めていく必要があります。

もう一つは、「一律の支援では足りない」という視点です。

ケアラーの属性、ケアを必要としている人の属性、またその両者の関係性等によって、それぞれが抱える困難も必要な支援もケースバイケース、まったく異なります。

年齢、続柄、ケアの内容、就労(就学)状況など、多様なケアラーそれぞれの実情に即したケアラーに対するアセスメントと支援プランが求められます。

専門職から、ケアラーに声をかける勇気を

そしてもう一つ、支援現場の専門職のひとりとして強く意識しておきたいのが、「ケアラーは支援を求める声を、自分から上げにくい」という特性です。

「自分が頑張らなくては」「誰かに話しても仕方がない」――そう思い込んでしまう背景には、社会的な規範や責任感、そして孤立があります。

だからこそ、当事者からの発信を待つのではなく、私たち医療・福祉・法律の専門職の側から、積極的にケアラーの存在に気づき、声をかけていく姿勢が欠かせません。

できることから、地域で動き出す

法律ができるのを待つだけでなく、できることから動く。

その積み重ねが、いずれ大きな流れになると信じています。

ケアラー支援は、特定の誰かのための特別な制度ではなく、支え合う社会をつくるためのいわば土台づくりです。

行政、そして医療・福祉・法律職の皆さまにもぜひ、こうした政策提言の中身を知っていただき、それぞれの地域で、それぞれの立場から、「今、できること」を一緒に考えていただければ幸いです。

ケアラーを支えることは、地域そのものを支えることにつながっていくはずです。

参考資料
一般社団法人日本ケアラー連盟発行「支える人を支えたい‐ケアラー支援のための政策提言」