
「自分のこと」、後回しになっていませんか
介護、看護、育児、障がいのある家族へのサポート・・・
ケアの形はさまざまですが、毎日のことだからこそケアラーご自身のことはつい後回しになりがちではないでしょうか。
ケアラー(家族介護者)にもレスパイトの時間は大切です。
ケア(介護)の場面において、「レスパイト」とはいわゆるケアから離れる「一時休止」「休息」という意味で使われ、最近は特によく耳にする言葉です。
ケアをする人にも、される人にも「離れる時間」が必要だという視点。
今回は、ケアラーが「自分のためだけの時間」をもつこと、その重要性について考えてみたいと思います。
「離れてはいけない」という思い込み
ケアは、ある日突然始まり、いつまで続くのか見通しが立てづらいものです。
長寿社会の進展もあり、ケア生活自体が長期にわたる可能性も決して低くはないと感じています。
そして、ケアをしている方の多くが「自分の生活や人生を後回しにしがち」という状況にあるとも言われています。
実際にケアラー支援活動の場面でも、ケアラーの方からこんなお声をよく耳にします。
「自分だけ趣味を楽しむなんて申し訳ない」
「(要介護者に)何かあったらと思うと、出かけられない」
「介護が落ち着いてから・・・」
どれも、大切な人を思うからこその自然なお気持ちだと思います。
また、中には、周囲の人から「介護を人に任せて楽をしている」と受け取られるのでは、と心配される方もいらっしゃいます。
ただ、「出かけないでおこう」「今は無理だ」と自分の予定を手放し続けていると、いつの間にか「自分の人生を犠牲にしている」という気持ちが、心の中に芽生えてしまうこともあるようです。
そして、笑顔でいられない自分に、さらに罪悪感を重ねてしまう・・・という悪循環も、少なくないのではないでしょうか。
24時間365日、気の休まらないケアが続けば誰でも心身の疲れがたまります。
疲労がたまったままケア生活を続けていくと、ケアをする人もされる人も、共倒れになってしまう危険性も出てくるかもしれません。
休むことは「楽をすること」ではなく、大切な「ケアの一部」
まず大切にしたいのは、ケアラーが自分のための時間をもつことは、「わがまま」でも「楽をすること」でもない、という考え方です。
たとえば、子育て中の方が、保育園やどなたかサポートしてくださる人にお子さんを預けることについて、ご自身を責める人は少ないのではないでしょうか。
しかし、介護のことになると、「ひとに任せるなんて」と自分で自分を責めてしまう人が多いように感じます。
ケア生活において、ケアを受ける要介護者の状態は、良くなったり、悪くなったり、落ち着いたりを繰り返しながら続いていくことがめずらしくありません。
だからこそ、ずっと張りつめ続けるのではなく、落ち着いているときに、少しでも肩の力を抜く時間をつくっておくこと。
それが、結果としてご自分がやりたいケアを続ける力になるのではないでしょうか。
ケアから一時的にでも離れて気分転換ができると、要介護者にもやさしく接する心の余裕が生まれる場合もあるようです。
ケアラー自身の人生にも、楽しみや役割、人とのつながりがあるのは当然のこと。
それらを手放さずにいることも、大切なケアの土台だと思います。
私は、ケアラーが休むことは「ケアを続けるための、大切な一部」だと考えています。
ケアラーが笑顔でいられることは、要介護者の安心にもつながっていくのではないでしょうか。
今日からできる、小さな一歩
では、具体的にどのようなことができるのか考えてみましょう。
①「ショートステイ」を利用する(サービスを確認しておく)
ショートステイは、要介護者が施設に短期間入所するサービスです。
ケアラーの旅行や趣味などのリフレッシュだけでなく、冠婚葬祭や、ケアラー自身の急な体調不良のときにも頼れる存在です。
まずは担当のケアマネジャーさんや相談支援専門員さんに相談してみてください。
費用や空き状況、条件は事業所によって異なりますので早めの確認がおすすめです。
②サービスを日ごろから利用して、「顔なじみ」に
いざというときだけでなく、普段から少しずつ利用しておくと、事業所のケアスタッフさんと顔なじみになり、緊急時にも安心につながります。
これは、ショートステイに限らず言えることかと思います。
③旅行や趣味の外出などに誘われたら、まずは「行く方向で」考えてみる
誰かからお出かけに誘われても、最初から「行かない」「行けない」と決めてしまわず、「行くにはどうしたらいいか」を、介護の支援者さんや周りの人と一緒に考えてみる。
そのひと呼吸や柔軟さが、ケア生活における日々の選択肢を広げてくれます。
④「数時間」の自分時間も、立派な休息
美容院、友人とのお茶の時間、散歩、映画鑑賞、ご自身の通院や健康診断・・・
短い時間でも、その時間を「自分のためだけ」に使うことに意味があると思います。
こまめに「自分時間」を確保する意識をもってみましょう。
ケアラーの人生も、大切にされていい
私は、日ごろから、ケアラーの人生もケアを受ける方と同じくらい大切にされていいと思っています。
「自分のためだけの時間」は、要介護者への愛情を減らすものではありません。
これからも続くケアを、ご自身らしく支えていくための「土台」です。
イライラする、疲れが取れない、眠れない・・・そんなサインが出てきたときは、心と体からの「そろそろ休憩しようよ」というお知らせかもしれません。
休むことに、罪悪感はいらないのです。
ひとりで抱えるにはちょっとしんどいことも、誰かとつながることで、幾分おだやかに軽くなれる。
私たち支援者も、ケアラーが「休んでいい」と思える関わりをこれからも続けていきたいと思います。
ケアラーであるご自身のための時間を、まずは小さなところから。
