
家族介護は生活の中にある
先日報道されました神戸市での事件(要介護者の祖母が、20代のお孫さんの手によってお亡くなりになりました)を受け、どうしても・・・改めてお伝えしたいと思い書きます。
改めて・・・というのは、何度も、ずっと言い続けていることだからです。
「介護」は、簡単なことではありません。
並大抵のことではありません。
要介護者の病気や障がいがあります。
命がかかっています。
そこには人生があります。
そして、なにより介護は「生活」です。
病気や障がいは、ある種の特別なことかも知れません。
可能であれば、おそらく誰しも避けて通りたいものです。
しかし、生活は違います。
どなたにとっても、日常の日々のことです。
特に「家族介護」は、その生活の中にあります。
一人で担うのは無理です
「家族介護」の鉄則は、ひとりで抱え込まないことです。
お世話の手・・・いわゆる実質的なお世話をする介護も、精神的なストレスも、経済(かかる費用)も、ひとりで抱え込んでいいことはありません。
私には、家族介護の経験があります。
在宅でも看てきましたし、施設にも病院にもお世話になりました。
介護保険も医療保険も、障がい者手帳も、近隣の方々の支援も、ガッツリ使ってきました。
一人の要介護者を看ている最中、他の家族が新たに病気にもなりました。
そして、今、我が家は二人の要介護者がいます。
そんな我が家ですので、私は理想やあこがれをただふんわりお話しているつもりはありません。
【家族介護のすべてを一人で担うのは無理】
家族介護の経験者として一つ、でもハッキリ!とお伝えできることです。
なぜなら、「介護が」ではなく、介護者と要介護者の「生活が」、たちまち立ち行かなくなります。
モヤモヤを発信してください
とは言え、当然のことながら、それぞれのご家庭で、それぞれのご事情もあるかと思います。
経済的な事情も、家族関係もそれぞれです。
ただ、まず大切なのは、「声をあげる」ことです。
・・・・・何を?
「介護を、一人で抱え込むつもりはないし、抱え込みたくない。」
「自分は、(介護に、要介護者に、他の家族に、お金に、仕事に・・・)困っている。」
「この生活は、どうにかならないのか!」
・・・という、モヤモヤしていることを発信することです。
そもそも、あなたのことを「家族介護者」なんて誰が決めたのでしょうか?
あなたには、「家族介護者のレッテル」を勝手に貼られることを拒否する権利もあります。
ただ、そうは言っても、不本意であっても家族介護を引き受けてしまうのが我々日本人の良くも悪くも哀しいかな国民性であり、家とか、家族とか、そういった古くからの根強い文化的背景の難しいところですね。
では、どこに向けて先の想いや言葉を発信するべきか。
「介護の相談窓口」です。
地域包括支援センターしかり、市町行政の窓口しかり、社会福祉協議会しかり・・・
介護に限ったことではありませんが、日本には「福祉」やそもそもの「生活」に関する相談窓口はたくさんあります。
ただ、残念なことに、それらの窓口は「あちら側」から出向いてきてくれることはそうありません。
相談窓口の方が「あちら側」から出向いてくるときは、よほど事態が大きくなっているときです。
何某の危険が迫っている時と言っても過言ではありません。
そして、各相談窓口には、それぞれに専門家がいます。
相談に出向いてくる人を無下にすることはできないはずです。
まだ、なんとな~く何を相談していいのかよくまとまってもいないような「なんか・・・このままだと嫌だな。不安だな。」というぐらいの初期の段階で大丈夫です。
相談窓口を訪ねて、ぜひ「なんか、嫌だな。」「不安だな。」という想いをお話ししてください。
なんなら、相談窓口でなくとも、地域の民生委員さんでも、ボランティア団体でも、必ずしも専門家がいなさそうなところでも最初は結構だと思います。
モヤモヤを発信しましょう。
まずは、あなた自身の「生活」を守りましょう。
スピード感をもってつないでいく
専門職同士の連携や業務の質の向上については、先のブログ(「つなぐということ①」2020年10月28日付)でも、私なりの意見を書きました。
「専門職同士の連携」は必須です。
家族介護者に「一人で抱え込まないで」というメッセージをたびたびお伝えしておりますが、専門職の方においても同じです。
クライエント(相談者)の不利益にもつながりかねません。
これは、あくまで私の個人的な印象ですが、課題(対応)の抱え込みはベテランの支援者さんに特に多いようにも感じます。
確かに仕事ができる人ほど、人を動かすよりも自分自身が動いた方が早いとか、難しそうな課題へ取り組もうとされる意欲も臆せずお持ちかも知れません。
キャリアや実力は理解しますし、尊敬しています。
ただ、少しだけ立ち止まって頂いて、そもそものチームアプローチと後進の育成を考えたとしたら、それはあなたのポジションから、あなた一人で対応するべきことでしょうか?
また、専門職側の「介護者支援」を考えるときに、日頃から一つ感じているのは、支援をつなぐ「スピード」です。
受け付けた窓口の専門職が相談内容をとりまとめ支援の分析をすると思いますが、そこから先の動き、すなわち相談内容を分担して、さらに然るべき支援者や窓口につなげていく際のスピードです。
ここをのんびりしていると、家族介護者(相談者)がどんなに初期の段階で「発信!」してくださっても、支援の展開が遅れてしまいます。
窓口のみなさんにとっては、多くの相談内容の一つかも知れません。
しかし、相談する側の家族にとっては、今、すでに目の前で起こっている「一番のこと」かも知れません。
忙しいこと、たくさんのお仕事を抱えておられることはわかっています。
ただ、それを相談者に向けて「対応が遅れている理由」にはできないと思います。
「相談に来てくれたこと。」「困りごとを発信してくれたこと」にまずは寄り添ってください。
専門職である支援者が、相談受理後の対応をスピード感を持って行う。
連携をスムーズに行うためのご自身の力量に対する自己覚知と役割分担の意識。
つなぐ先の引き出しも持ち合わせなければいけませんね。
餅は餅屋・・・でも、どの餅屋につなぐかもあなたの専門職としての力量が問われるところではないかと思います。
介護者支援は、すなわち、専門職側における支援の対象者であろう「要介護者」の生活や命にもつながっていると思って頂きたいです。