
18歳の壁の先にあるもの
先日、「改正医療的ケア児支援法」が成立し、支援の対象がこれまでの18歳未満から18歳以上へと広がるというニュースがありました。
いわゆる「18歳の壁」が少しずつ解消へと向かい、ご本人の自立を後押しする仕組みが整えられつつあることに、期待を寄せている方も多いのではないでしょうか。
こうした制度の広がりは、とても心強いものです。
ただ、その一方で、私たち支援者のもとには、「制度が整っても、実際に家族の中でどう自立を進めていけばよいのか分からない」というご相談が、今も少なくありません。
今回は、障がいのあるお子さんと、その親御さんそれぞれの「自立」について、改めて考えてみたいと思います。
※以前のブログ「障がいがある成人した子への「親の扶養義務」と、子の「経済的自立」について考える~その①~」「~その②~」でも、経済的自立をめぐる親子の関係性について触れておりますので、あわせてご一読いただけますと嬉しいです。
今、家庭の中で起きていること
「親子」の関係には、法律上「扶養義務」があります。
しかし、子が成人している場合、その関係性は少し複雑になります。
たとえお子さんに障がいがあったとしても、ご本人の「経済的自立」をまずは「ひとりの大人(社会人)」として捉えて検討していくことが、特にこれからの時代には求められているように感じます。
もちろん、同居して生計を共にしているご家庭など事情はさまざまですので、一概には言えません。
一方で、80代・90代くらいの高齢の親御さんの中には、親御さんご自身に「子の日常生活の自立」「子の経済的自立」という感覚があまりないケースも見受けられます。
長年にわたり「親として自分がなんとかしなければ」というお気持ちでお子さんを支え続けてこられたからこそ、その想いはとても自然なものだと思います。
しかし忘れてはいけないのは、親御さんご自身にも生活があり、生活には「お金」も必要だということです。
加齢とともにご自身の介護費や医療費がかかるようになっても、蓄えの多くがお子さんのために使われていてゆとりがない、というご相談も実際にあります。
また、徐々に生活の中心を親御さんご自身の医療や介護に置き換えることが必要になっていく場合もめずらしくありませんが、なかなかそうできない・・・など。
私たちが考える、これからの向き合い方
大切なのは、親子(家族)の「気持ちを尊重すること」と、「これからの生活の見通しを立てること」を両方とも大事にしていくことだと思います。
どちらか一方に偏ってしまうと、結局しわ寄せは親子のどちらかに向かってしまうからです。
まず考えていただきたいのは、「お金の管理」と「契約などの手続き」は、それぞれ役割も限界も異なる、という点です。
たとえば成年後見制度は、施設や病院との契約、福祉サービスの選択、悪質な契約の取消しなど、「契約行為」の場面でとても心強い仕組みです。
ただし、専門職後見人は日々の介護(ケア)そのものを担うわけではなく、その点においてはサービス利用が原則です。
また専門職が後見人等に就く場合には継続的な報酬が発生する点もあらかじめ知っておいていただきたいところです。
一方で、家族信託や特定贈与信託といった仕組みは、親御さんの財産をお子さんの生活費として長期間にわたり確実に給付し続けられる点が特徴です。
成年後見制度のように家庭裁判所の関与を受けずに、お小遣いや特別な医療費など、親御さんの想いに沿った柔軟な支出を設計できるのは大きな利点でしょう。
ただし、信託だけでは施設の入所手続きのような「契約行為」はできません。
ここが、成年後見制度との大きな違いです。
つまり、「お金に関すること」と「手続き(契約)を行うこと」は、別々の仕組みで補い合う必要がある、ということです。
実際に、「お金は信託で、契約手続きは後見人が担う」という併用の形を選ばれるご家庭もあります。
あるいは、個人ではなく、信頼できる法人が後見業務を引き受ける「法人後見」という選択肢を検討されるケースもあります。
いずれにしても大切なのは「早めに動き出すこと」だと思います。
準備を先延ばしにしてしまうと、いざというときに手続きだけでも数か月かかることがあり、その結果、お子さんが困った状況に長く置かれてしまう可能性があります。
「まだ、大丈夫」と思っているうちに、少しずつでも情報を集め、選択肢を整理しておくことが、結果として親子双方にとって一番の安心につながるのではないでしょうか。
自分らしく生きていくために
親御さんにとってお子さんの自立を後押しすることは決して「突き放す」ことではありません。
むしろ、お互いが自分らしく生きていくための大切な一歩なのだと思います。
制度は少しずつ整いつつあります。
あとは、それぞれのご家庭(親子)が、ご自身のペースで、無理なく準備を進めていくことが大切なのではないでしょうか。
親も、子も、それぞれが自分の人生を歩んでいけるように。
私たち支援者もそのお手伝いができればと願っています。
こちらもあわせてご覧ください
