
社会福祉士と成年後見の受任
私自身は、個人事務所を経営しているフリーランスの社会福祉士です。
社会福祉士の業界では「独立型社会福祉士」というカテゴリーに属しています。
「成年後見の受任」は私がいくつかしている仕事の中の一つです。
社会福祉士の中には、私のようにフリーランスではなく、どちらかに所属し正規職員としてお勤めしながら後見の受任もしている人もめずらしくありません。
成年後見の受任を「副業」にされている社会福祉士ですね。
正確な数はわかりませんが、地域の中におそらく一定数いると思います。
社会福祉士としての自身の「専門性」と被後見人等の属性
はじめて後見の受任を「副業として」はじめる社会福祉士さんから受けるご相談の中で多いのが、社会福祉士としてのご自身の専門性(専門とする福祉のフィールド)と被後見人等の病気や障がいの属性についてです。
我々社会福祉士は、たとえば高齢者福祉や障がい福祉、児童(子ども)、地域福祉、医療・・・など、社会福祉士としての自身の専門分野を持っています。
そして、成年後見制度を利用されるのは「日常の判断や意思決定にお手伝いが必要な何らかのご病気や障がいをお持ちのひと」です。
中にはご病気や障がいが重複する方もいますが、大きく分けて「認知症」「知的障がい」「精神疾患」があります。
社会福祉士が成年後見の受任を考える際、自身の福祉職としての専門性と被後見人等の制度利用の理由とされる疾患や障がいをどう考えるかという点について。
多くの社会福祉士さんが、「ずっと高齢者福祉の現場で仕事をしてきたので認知症高齢者の方を」「障がい福祉の分野に従事していたので知的障がいのある方を」と考える傾向が強い印象があります。
後見人等の「ポジション」と「利益相反」
「その分野の支援に詳しいから」
「あれこれ情報も知っているし」
そのような理由から受任し後見人等になってからも、後見実務がしやすいイメージがあるのかも知れません。
その考えは理解できなくもないです。
しかし、後見業務の実務を担うにあたり、それはそんなにも重要なことでしょうか。
あくまで個人的な意見ですが、私は特に「副業として」後見業務に携わるのであれば、自身の専門分野のカテゴリーに入る支援対象者の方を受任することはむしろお勧めしません。
理由は二つあります。
ひとつは、あくまで後見等の受任者であり、自分自身はクライエントにとって例えば介護士でもなければケアマネジャーでもないわけです。
つまり、後見人等としてのポジションに必要なのは、「後見人としての視点や考え」であり「後見人としての動き方」です。
ご本人のご病気や障がいの何某について詳しく知りたければ、それを専門としているご本人の支援者らに確認すれば事足りますし、後見人が支援者らをその部分で超える必要はないと思います。
ふたつ目は、被後見人が支援対象となる福祉分野で特に正規職員として仕事をしていると、もしかしたら、何らかのタイミングで被後見人と「利益相反」となる状況がまったくないとは言い切れないと思います。
業界は広いようで実は狭いものですから。
そして、後見実務の中では、いつ何が起こるかわかりません。
被後見人の居所がずっと受任当初と変わらないとか、利用しているサービスや行政区に変更がないとか、そのようなことはまったくわかりません。
その人の生活や人生に伴走するということは、そういうことです。
自分自身が「関係している」という理由で、被後見人等の選択肢に影響が出たり、法定代理人として主張しなければならないことを躊躇する気持ちになったりするかも知れません。
そのようなとき、被後見人へのなんらかの「不利益に対する責任」をどう考えますか。
受任者としての責務
成年後見の受任をあくまで「副業」とするために、受任者となるための研修を受けるという話も耳にします。
働き方も多様性の時代になっている昨今、なにも「副業」を悪いとは思っていません。
ただ「〇〇時間研修を受ければ社会福祉士として後見人になれる」とか、「職場の理解があれば、副業にもできる。」とか、それだけではいささか安直ではないかと感じます。
裁判所から審判を受けて「法定代理人」になるのが成年後見の受任です。
もちろん、ニンゲン生きていれば日常生活の中で何らかの現実的な判断をしなければならないし、それは被後見人さんらも同じです。
ときに、我慢を要することも出てきます。
しかし、被後見人さんに「受任者側からの理由」で「我慢」をもたらすことは絶対にあってはいけません。
もはやそれは我慢ではなく、受任者がもたらした「不利益」です。
そうならないためにも受任する段階で、専門職だからこそ考えられる限りの「想定」をしなければならないと思います。
大切なのは、法定代理人としてなにを優先すべきかではないでしょうか。