
「最期のとき」に求められる対応とは
成年後見制度の受任者として避けては通れない場面があります。
それは、ご本人の「最期のとき」への対応です。
最初に基本的なことを確認しますが、ご本人(被後見人・被保佐人・被補助人)がお亡くなりになった場合、まず共通して言えるのは家庭裁判所への速やかな報告・連絡が前提になるということです。
ご本人の死亡が確認された場合、速やかに報告しましょう。
事案によっては家庭裁判所から必要な指示を受けたり、受任者としても取り急ぎ確認しておいた方がよい事柄があるかも知れません。
ご本人の死後の対応については、何にしろあまり時間をかけられないことも多いです。
また、火葬・埋葬の許可や手配については、「後見人」の場合、法的な根拠に基づいて関与できる場合がありますが、権限の範囲については慎重に確認しながら進める必要があります。
後見人と「保佐人」「補助人」の違いを押さえましょう
後見人と保佐人・補助人では、死後の対応について考え方が少し異なります。
後見人の場合、ご本人はすでに「判断能力を欠く状態」にあるため、後見人が代理権をもって死後の手続きを進めることも多いです。(*ご遺族等が対応される場合もあります。また、被後見人の生前の意思表示や希望がないがしろにされて良いといったことでもありません。)
一方、被保佐人・被補助人は、そもそも「判断能力が完全になくなっているわけではない」という審判の類型です。
つまり、生前にご本人自身が「自分の死後の対応について、ある程度の意思表示や希望の表明ができていた(はずである)」という前提があります。
もちろんご本人の判断能力の程度にもよりますので、類型が後見であっても一概には言えませんが、後見と「保佐」「補助」のこの違いが亡くなった後の対応にも反映されてくることを押さえておきましょう。
基本は「ご本人の意思」が親族より先にあるということ
「類型が後見ではないので、受任者に死後対応に関する権限がない。」よって、「類型が保佐・補助の場合は、ご本人の親族(相続人)に確認しながら死後対応を進めなければならない。」という認識で受任者が対応している話を耳にしました。
完全にまちがっているとは申しません。
しかし、その判断の「根拠」と「順番」は違うと思います。
特に保佐・補助における意思決定支援の本質は、その保たれている判断能力の可能性からしても可能な限りご本人の意思・希望を中心に置くことです。
親族の意見を聴くことが先にくるのではなく、ご本人が生前に何を望んでいたかを確認し、お亡くなりになったあとも尊重することが、まず最初にくるべき姿勢ではないでしょうか。
親族(相続人)との協力・調整が必要な場面ももちろんあるかと思います。
生前、ご本人に死後の対応について意思確認ができなかった場合、または希望は伺っていたけれども何らかの理由で叶えられそうにない現状がある場合など。
ただ、意思決定支援を行う法定代理人としては、それはあくまでも二次的なことだと捉えた方がいいでしょう。
また、たしかに、そもそも誰かがお亡くなりになった場合、一般的には葬儀等を執り行うのはいわゆる亡くなった方の「遺族」であることが多いです。
しかし、成年後見制度においてはご本人とご親族の関係性に諸事情あり、受任者がご遺族に代わり死後の対応をすることも少なくありません。
ありがちな「一般的な」動き方と、されどあくまで権利擁護支援のひとつのツールである成年後見制度における意思決定支援を、受任者の立場から混同しないように気を付ける必要があります。
最期までその人の尊厳を守る
成年後見制度の理念は、ご本人の「権利」と「尊厳」を守ることです。
それはご本人がご健在の間だけではなく、最期の瞬間まで、亡くなった後の手続きにおいても変わりません。
「(類型が保佐・補助だから)後見ほど関わらなくてもよい」とか「そもそも代理人として介入することができない」といった受任者の思い込みから、結果としてご本人の意思を置き去りにしてしまうことが起こるかも知れません。
死後の対応において受任者として求められるのは、ご本人がどう生きてきたか、何を大切にしてきたかを最期まで丁寧に尊重すること。
ご本人の代弁者として周囲にお伝えすること。
その人らしい旅立ちを支えることではないでしょうか。
