成年後見制度の利用が必要かどうかを考える

ケアマネジャーさん向けコラムその①

ご利用者さんに「成年後見制度の利用」を勧めるか、どうしようか・・・そもそも必要性の根拠ってなんだ?

迷ったときのポイント!を解説します。

ケアマネジャーさんが、ご自身の利用者さんを、成年後見制度の利用につなぐ必要があるかどうかを考えるとき、重要なのはその方の「判断能力の有無」です。厳密にいえば、その旨の医師の診断が必要です。

もう少し言うと、目が見えないとか、耳が聞こえないとか、車いすを利用していて自分では歩けないとか、寝たきりで外出も大変だとか、そういうことではありません。

また、頼れる家族がいる、いない、そういうことでもありません。後見人等は家族の代わりではないからです(・・・このことについては、このシリーズ:コラムその②で解説します)。

もし、上記のような身体的状態、また頼れる家族がいない場合でも、その方に、ではどうすればいいのか考える力、判断する力、支援者の説明を聞き理解する力があれば、何某の課題に対し利用者さんご自身で対処すればいいですし、支援者としてはそこにつなぐ支援を行えばよいでしょう。

社会福祉協議会の日常生活自立支援事業を利用するとか、弁護士さんとホームロイヤー契約をするとか、今のうちから任意後見契約をしておくとか、もしくは民間の福祉(見守り)サービスを利用するとか、・・・などが、その手段にあたります。

昨今、成年後見制度利用の普及啓発が進む中で、特に医療や福祉の専門職の方にも制度のことを学ぶ機会を多く持っていただき、実務に携わる者としてはありがたく思います。

ただ、利用者さんにとってその制度利用が必要なんじゃないか、地域包括支援センターにその旨相談しようかと思ったとき、一度、立ち止まって考えてください。

今、目の前で起こっている何某の課題。その課題で、実際に困っているのは誰ですか?

利用者さん自身はご自分で判断能力はあるけれども、支援者さん側が上記のような支援に利用者さんをつなぐことが困難な状況であるとすれば、支援を展開する上で本当に困っているのはご本人ではなく支援者さんなのかも知れません。

ここで重要なのは、成年後見制度は権利擁護(権利を守る)ための制度だということです。

しかし、上記のように、支援者側が対応に困っているので、成年後見制度に「ひとまずつなごう」とか、本人の代理人になってくれる人を立てて「その人と話を進めよう」とか、そのような視点に重きが置かれたとしたら・・・ともすれば、権利擁護のための制度利用または制度へのつなぎが、ご本人にとっての権利侵害になりかねないこともあり得るのです。

成年後見制度は、いわゆる市町の行政機関が行う「認定」とは全く違います。

民法に基づく裁判所で行われる「審判」です。その審判内容は法務局で「登記」されます。

そして、一度審判がおりると、そのご病気や障がいが明らかに回復されなければ取り消されることもありませんし、取り消すためにも申し立てを行い、再度そのための審判を受けなければいけません。

成年後見制度における権利擁護は、それぐらいの効力があります。

逆に言えば、それぐらいの効力をもって、ご病気や障がいがゆえに判断能力に支障のある被後見人等を守る力が働いているのです。

成年後見制度は、利用者さんの判断能力の欠如または不完全さがゆえに、ご本人に不利益が生じている場合に利用されるものであることを改めてご確認ください。